相続登記の義務化と住所変更登記の義務化の概要

相続登記の義務化の概要 Topic

所有者不明土地に対する3法律の公布

平成29年度実施の国土交通省の調査によれば、不動産登記簿のみでは所有者の所在が判明しなかった土地の割合は約22.2%(筆数ベース)で、原因は相続登記の未了(約65.5%)、住所変更登記の未了(約33.6%)が占めています。

これら所有者不明土地により、民間の土地取引や公共事業の用地取得など様々な場面で支障が生じ、また、土地の管理不全化や周辺環境の悪化にもつながっています。

これらの問題への対応として、民法、不動産登記法の改正及び相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(相続土地国庫帰属法)の3法が国会で可決・成立し、令和3年4月28日に公布されました。

不動産登記法の改正

相続登記未了への対応

(1)相続登記の義務化(R6.4.1施行)

相続により不動産の所有権を取得した相続人(施行前の相続人も含む)は、所有権を取得したこと等を知った日から3年以内に相続登記申請をする義務を負うこととなり、正当な理由なく申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処されることとなります。

 

(2)相続登記申請の負担軽減

①相続人申請登記(R6.4.1施行)

相続人申請登記とは、自らがその相続人であること等を知った者は、知った日から3年以内登記官に対して申し出ることで、相続登記の申請義務を履行したものとみなすものであり、登記官は、所要の審査の上、申し出をした相続人の氏名及び住所等を職権で登記に付記するものです。

 

②所有不動産記録証明書(R8.4までに施工)

相続人に被相続人名義の不動産を把握しやすくすることで、相続登記申請にあたっての手続的負担を軽減するとともに登記漏れを防止する観点から、登記官が、特定の被相続人が所有権の登記名義人として記録されている不動産を一覧的にリスト化し、証明する所有不動産記録証明制度が新設されます。

 

③その他
登記名義人の死亡等の事実の公示(R8.4までに施行)

登記官が、住基ネットなど他の公的機関から取得した所有権の登記名義人の死亡情報に基づいて不動産登記に死亡の事実を符合によって職権的に表示する制度が新設されます。

 

住所変更登記未了への対応

(1)住所変更登記等の義務化(R8.4までに施行)

所有権の登記名義人(施行前の登記名義人も含む)に住所等の変更があったときは、変更があった日から2年以内にその変更登記の申請をすることが義務付けられ、正当な理由がなく申請を怠ったときは、5万円以下の過料に処されることになります。

 

(2)登記官による住所変更登記(R8.4までに施行)

登記官が、住基ネットや、法人では商業・法人登記のシステムから所有権の登記名義人の住所等の異動情報を取得する仕組みを新設し、登記名義人の住所等に変更があったと認める場合には、職権で住所等の変更登記を行うこととなります。なお、職権での住所変更にあたっては法務局から、所有権の登記名義人に確認を行い、変更について了承を得たときに、登記官が変更登記をすることとなります。

 

(3)その他

形骸化した登記(売買契約日から10年を経過した買戻し特約登記等)の抹消手続きの簡略化(R5.4.1施行)や、在外外国人が所有権の登記名義人である場合、国内連絡先も登記事項とする(R6.4.1施行)等が新設されています。

全日かながわ 2023 NO.158 夏号 抜粋

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